庭から発想する建築
これはL&Aデザインの創造の原点である。造園という用語については、明治以降、欧米から入ってきたLandscape Architectureの和訳として適用された言葉とされている。今日では従来の庭園や作庭という意味も含めつつ、より広範囲の観念をもたせたものとなった。
「造園」という行為は古く、人類の歴史と共にある。水があり、魚や鳥がいて、果物など食料が貯えられ、人間の生存に必要な、かつ安全・安心で、さらに精神性としての愛がある空間であると考える。それは人間にとって根源的な空間なのだ。
庭園は「凍れる音楽」と呼ばれることがある。目に見える形になった音楽ということだ。音楽は、時間軸で曲ができている。庭も音楽もイントロから期待させながら進み、いろんな物語があってクライマックスに至り、静かに終わり余韻を楽しむ。これはまさしく「時間の芸術」「時間のデザイン」だと思われる。空間と景観を移動しながら時間変化を体験し、楽しむ。庭園の味わいとはそういうものなのだ。
空間を囲んで理想郷をつくる「縮景」や、外界との繋がりを持とうとする「借景」、その土地に根差した植物を使う「樹芸」、そして、時間や歴史の味わいである「さび」、つまりそれらは「エイジングの美」なのである。「景観」をつくり「風景」に育てる、その一番簡単な方法は「エイジングの効く素材を使って環境をつくる」ことだ。エイジングは「自然素材」さらには「自然地形」や「自然植栽」を生かして環境をつくる。景観も家づくりも同じではないだろうか。